第233章 花弁
――――俺にはわからなかった。
そこまで見ず知らずの人間の命に真剣に向き合って、涙を流すナナの気持ちが。
ナナも俺の冷たい言葉を、理解できなかっただろう。
そしてやっぱり何年経っても、俺は俺のままだ。
――――こうして見ず知らずの多くの人間を踏み躙り、殺す決断をした。
ナナは今――――、俺をどう思ってる?
今度こそ化け物だと、見限ったかもしれない。
泣いてるかもしれない。
ナナのことだ。
『私がエレンを止められなかった』って……
また自分を責めて、泣いてないか。
少し胸が痛む。
――――けど、もう未来は決まっていて、俺に選ぶ余地はなかったから。
その先の未来、ミカサが何かを成す。
その為に俺はこの前代未聞の大虐殺をやる必要があった。
――――進撃の巨人の力で視た未来へと突き進むために。
――――ミカサ、アルミン、ナナ。
そして……調査兵団のみんな。
こんなこと、信頼しているお前らにしか頼めない。
――――俺を止めたいなら、殺すつもりで刃を振るってくれ。面倒な奴だと、とんでもない奴だと思うだろう。
でも……全てが終わったその時、俺の真意を知ったら………お前達は分かってくれると、信じてる。
――――だから今はひたすらに、憎悪を押し固めた化け物として。
この世界にこれ以上ない衝撃とともに……懺悔と改心のきっかけをもたらすのが………
俺の、役目だ。