第232章 愛惜 ※
黙って私を見下ろすリヴァイさんのその左目が色情に揺らめいたように見えて、ゾクリと嫌な感じがしたのは……壁外調査の出立前夜などに見られた、性衝動の昂ぶりを思い出させたからだ。
いつか本で読んだ、死期を感じ取ると生殖行動を渇望するような衝動が起きやすくなるという。
もし……もしそんな風に、リヴァイさんの本能が死期を悟っているとしたら。
怖い。
嫌だ。
これが最後なんて……。
私があまりに不安な顔でリヴァイさんを見上げたからか、リヴァイさんは苦しそうに呟いた。
「―――悪い……今この状況で、適切じゃなかった。」
「―――いえ……。」
リヴァイさんは身体を起こして、私に背を向けてベッドに腰かけた。
もし、オディハに着いたはいいけれど、飛行艇の整備が間に合わなければ私たちはそこで、地鳴らしに踏みつぶされて終わることになる。
――――もう二度と、こうして彼に触れられないまま。
「―――もう眠らないなら、ハンジのところへ行ってやれ。」
私の方を振り返らないまま、リヴァイさんは静かに言った。
その背中から彼をそっと抱きしめて、耳元で意を決した言葉を伝える。
「………手短に……済ませられますか……?」
「――――あ?」
「………本当は私も、あなたを抱きたい……。」
振り向いたリヴァイさんの驚いた顔。
少し開いた唇にそっと唇を合わせて、ゆっくりと彼の肩をベッドに押し付けて覆いかぶさる。
「――――さっきの問いだが、手短に済ませる。」
「………はい。」
「失礼だと言わねぇのか?」
「……こんな、状況ですし……。」
「そりゃそうか。」