第19章 不穏
執務を終え、私は約束通りエルヴィン団長の執務室に来た。
コーヒーと紅茶を淹れてテーブルに置くと、どちらからともなくその話は始まる。
私が知る外の世界の文字を書いて見せたり、発音して聞かせると、エルヴィン団長はまるで少年のようにキラキラした瞳で食い入るように私を見つめる。……少し、くすぐったい。
「これは……?」
「Leaf……葉っぱ、です。」
「ナナの歌ってくれた歌にも出てきたな。ではこれは……?」
「Live……生きる、ですね。」
「発音が、リヴァイに似ているな。」
エルヴィン団長がくすっと笑う。私はLiveの文字を指でなぞる。
「そうですね、生命力に溢れるリヴァイさんに、確かにピッタリです。」
「……これは……?」
「Love……愛する……愛そのものを指すこともあります。」
「Love…………いい響きだ。」
顔を上げたエルヴィン団長と近距離で目が合った。咄嗟に目を逸らせて話題を変える。
「……っ……エルヴィン団長は、なぜ、外の世界に人類がいるとお考えになったのですか?」
徐々に近づいていた距離をリセットするように、ソファに大きくもたれかかってわざとらしく伸びをした。
エルヴィン団長は同じようにソファにもたれて伸びをすると、少しの間をもってその過去を話してくれた。