第19章 不穏
「………それと、君がほとんどの雑務を引き受けてくれたおかげで、珍しく今日は少し余裕があるんだ。執務が終わってから、君と外の世界の話がしたい。」
「………良いのですか?少しでも休める日に、休息をとられた方が良いのでは……ずっとご多忙でしたし………。」
「身体はそうでもないんだ。ただ心に栄養が欲しくてね。……外の世界の話は、なにより心躍り、活力が沸いて来る。君もそうじゃないか?」
「……はい、確かに。」
「とはいえ君に気づかいも無下にしたくはない。日が変わるまで、という約束で、どうかな?」
「喜んで!」
私は満面の笑みで答えた。
「あっ、では私今日の仕事をうんと頑張って終わらせるので!失礼します。………楽しみにしていますね。」
私はエルヴィン団長にぺこりと頭を下げた。
今日は何の話をしよう。
エルヴィン団長が外の世界に興味を持たれたきっかけを、聞いてみたいな。
私はワクワクしながらその場を去った。
「…………私も、楽しみだよ。」
ナナを見送って、エルヴィンは少し口角を上げてぽつりとつぶやいた。