第231章 体温
ちゃぷ、と水音をを立てて、手ぬぐいを絞る。
「失礼……します。」
療養を最優先するため個室のベッドに横になっているリヴァイさんのシャツに手をかけて、ボタンを一つずつ外していく。
私のせいで無理をさせたから、傷が開いた可能性がある。それを診るのと……、戦場では粉塵や火薬が風に乗って吹きすさんでいたから……なるべく取り除いておいたほうがいい。
固く絞った手ぬぐいで、体を拭いていく。
リヴァイ兵士長が他のみんなを優先しろと言うから、ハンジさんやアーチさん、ミカサやコニー、ジャンの手当はもちろん、ライナーやアニ、アルミンも……時間とともに勝手に傷は癒えるとはいえ、少しの時間でも痛みを和らげるように処置をした。
みんなが散り散りに休息をとっている時間だけは……片時も離れず、あなたの側にいたい。
「痛むところは、ありませんか?」
「――――指が、痛む。」
「さっき私の手を掴んで引いて下さるときに、無理に力を入れたからかもしれませんね……。まだちゃんと傷も塞がっていないのに……ごめんなさい。また血が滲んでる……。せめて新しい布に変えて……」
またリヴァイさんに痛い思いをさせてしまっていることが申し訳なくて、目を伏せたまま医療バッグをゴソゴソと探っていると、リヴァイさんは小さく息を吐きながら、痛みに耐える顔をした。
「鎮痛剤を飲みますか……?」
マガト元帥が船から離れる直前に、自身の持つ残りの鎮痛剤を数粒全て、ピークさんに預けて下さっていた。
「――――いらねぇ……。」
「でも、辛そうです……。」
「――――お前がいい。」
「………え?」
私の手を強く握って、その細められた目が私に向けられた。