第231章 体温
「追ってきてくれるみたいですね……!」
私が胸を撫で下ろして船が動き出すのを待っていると、低い声でリヴァイ兵士長が言った。
「――――いや……沈める気だろう。」
「―――――え………?」
リヴァイ兵士長の言葉通り、ドオン!!!!と大きな一度の爆発音と共に、港の船は真っ二つに折れて……黒煙が立ち上がる。
あまりに衝撃的な光景に、私はただ立ち尽くすことしかできなかった。
「なんで……!?マガト元帥、キース教官……っ!!」
「あの船が生きていれば、イェーガー派に追いつかれる。―――私達を確実にエレンの元に向かわせるために……彼らは、心臓を捧げて、くれたんだね……。」
こちらの船の速度が上がり、港とはもう随分な距離だった。
――――けれどその爆発音と黒煙は、はっきりと私の目に焼き付いて――――……
せめて、せめて……キース教官が長年自らを苦しめていた呪縛から解けて、晴れやかな心の内の最期であったと……願いたい。
「――――ありがとうございます………。シャーディス団長。」
涙ぐむ私の横で、ハンジさんは姿勢を正して心臓を捧げる敬礼をした。
――――でもどこかその横顔が、なんだろう……なにか良くない覚悟をしたみたいな表情に見えて……思わず私はハンジさんの腕をギュッと、まるで遠くに行ってしまわないでと願いを込めるように両手で掴んでしまっていた。
「――――ん?どうしたのナナ。」
「……いえ………。」
「そう?じゃあ上がろう。皆とこれからのことを話し合わなければ。」
こうして多くの犠牲を払って……飛行艇を牽引した船は、マーレ大陸オディハに向けて出港した。
ただこれで万事うまくいくわけではない。
それに……この後ハンジさん達から聞いた言葉に、みんなは絶句した。
この船に乗っているアニ・ライナー・ピークさん・ガビ・ファルコ……彼らの故郷であるレベリオを救う道はどこにもなく……巨人たちの進行速度から見て、今この瞬間に地鳴らしが止まったとしても、無事である可能性はないに等しいと。
その話を聞いて……アニは、崩れ落ちた。