第231章 体温
「――――ナナ!!!!」
その声に、階段の上を見上げるとハンジさんが急いで駆け下りてきてくれた。
「ハンジさん!!戻りました!!あ、あの申し訳ないのですが私がリヴァイ兵士長を下敷きにしてしまったので――――」
リヴァイ兵士長を上までお連れするために肩を貸してください、と言おうとしたのだけど……駆け下りて来たままの勢いで、ハンジさんもまた私にガバッと抱きついた。
「わっ!」
「――――良かった…… ナナ……。よく戻ったね。そしてありがとう。ナナが増援を食い止めてくれなければ、私たちは危なかった。」
「いえ、私だけじゃなく……あれ……?」
「どうしたの?」
私が離れて行く港の方を振り返って誰かを探す素振りを見せたから、ハンジさんは腕を解いてくれた。
「……キース教官が、力を貸して下さって……あとで合流すると、おっしゃったのですが……。」
「団長が……。」
「――――あ!!」
私が指を指した方向にいた人物は……マガト元帥だ。まだ残っているイェーガー派の兵士に銃で応戦している。
「船に……乗ってないんですか……?マガト元帥は……。あの数を一人で食い止めるなんて、無理だ……!」
そう呟いたとき、マガト元帥に協力するようにイェーガー派の兵士との戦闘に加わったもう一つの人影。
「――――シャーディス団長……。」
ハンジさんが小さく、その名を呼んだ。
……以前酔っぱらったハンジさんから聞いたことがある。ハンジさんはシャーディス元団長に、憧れていたんだって。
憧れた人の名を呼ぶハンジさんの声は、いつもより少し……幼く聞こえた。
やがてマガト元帥とキース教官は連れ立って、港に停泊しているもう一隻の船へと乗り込んだ。