第231章 体温
はぁっ、はぁっ、と……お互いの乱れた呼吸音と、リヴァイさんの高い体温と私の低い体温が重なる。
「―――いっ……たたた………。」
「――――俺の方が、痛ぇよ……。」
それはそのはずだ、とがばっと身体を起こした。
――――のだけれど、驚くほど強く両腕で抱かれて、結局また彼の腕の中に逆戻りしてしまった。
「――――馬鹿野郎が……っ!!」
その一言と、この腕の力強さが彼の心を物語っていた。
本当は行かせることすら、嫌だったはずなんだ。
だけど、私を信じてくれた。
いつもいつも、あなたは私を受け止めてくれる。
塔の上から降って来た時も。
こうして、馬上から降って来た時も。迷い傷付いた時も、心が折れそうな時もいつだって。
「――――離れないって、言ったでしょう?」
「嘘つけ。一瞬諦めやがったな?お前。」
「バレましたか。いえ、乗れなければ別の手段で追いつこうと思ってました。」
「嘘つけこの馬鹿野郎。」
「……リヴァイさんの言う『馬鹿野郎』も好きですが、今は……褒められたい気分です……。」
ぎゅ、と身体にしがみついたまま……少しだけ甘えるように彼の胸に顔をすり寄せて、小さな我儘を述べてみる。
リヴァイさんは動悸を抑えるように長い息を細くふーーーっと一度吐いてから今度は優しく私の頭に手を添えて、頭を撫でながら髪を梳いて、また体をきゅ、と抱きしめながら……なによりもくすぐったくて嬉しいその言葉を、くれた。
「よくやったナナ。偉かったな。」
リヴァイさんのその声は少々呆れ気味だったけれど優しくて、私はたまらなくなる。
「……はい!!」
どさくさに紛れてリヴァイさんの首筋に顔を埋めて、すん、とその大好きな匂いを吸い込んだ。