第19章 不穏
自分の装備を修理に出す手配をしながら、予備の装備の貸し出し表にも記録を残す。改めて破損した部分を見てみると、螺子穴に残った螺子の破片を見つけた。
―――――明らかに、力を加えて螺子に傷をつけていることがわかった。
一抹の不安を抱えつつふっとため息をつくと、備品倉庫に珍しい人影が私に声をかけた。
「おやナナ、今訓練中ではないのか?」
「エルヴィン団長。」
「どうした。装備の破損か?」
「はい…………人工的な細工のような気がします。」
「………心当たりは?」
「いえ。ありません。」
「――――――リヴァイ絡みの可能性もあるな。ああ見えてファンが多いからな、あいつは。」
エルヴィン団長ははぁっとため息をついた。その様子から、今までにもリヴァイさんを巡った女性同士のトラブルがあったのだと察する。
「私の注意も散漫でしたので、以後注意します。」
「あぁそうしてくれ。君になにかあったら困る。」
エルヴィン団長はぽん、と私の頭に大きな手を乗せて、柔らかく微笑んだ。