第231章 体温
目に飛び込んできたのは、望んでもいねぇ奴の姿。
「―――一人抜けた!!」
焦ったようなハンジの声の次に、キリモミ状態の戦場から立体機動で一人抜けて来たのは――――
「――――ガビ、狙え!」
「は、はいっ!!」
――――イェーガー派の頭だと言ってもいい存在のフロックは、鬼気迫る表情で雷槍を構えた。
「エルディアを救うのは!!俺だ!!」
フロックが雷槍のトリガーを引こうとしたその刹那、ガビの的確な射撃がフロックの肩を撃ち抜いた。
雷槍は逸れ、フロックもろともに海に――――沈んだ。
そして出港の合図のような汽笛を大きく鳴らして、船の煙突からは燃料を大量に燃やした黒煙が隆々と立ち上る。
「出港できるぞ!!早く乗れ!!」
オニャンコポンが船上から乗船を促すと、104期の奴らとアーチ、ハンジが息を整えながらこちらに目をやった。
―――が、その瞬間想定もしていなかった奇襲を受けた。
それは……巨人の力を制御できなくなったファルコだ。いつかのエレンのように、味方も見境なく攻撃を始めた。なんとか車力の力でファルコを抑え込んだ隙にマガトが項からファルコを引きずり出し、事なきを得た。
ファルコを船に送り届けたマガトは……、
船に乗ることもなく、背中を向けて港へと引き返した。
――――死に場所を決めたか。
「ふ、船を出しま……!」
「?!ま、待って……ナナは?!ねぇリヴァイ、ナナがいないよ?!」
船を出そうとしたオニャンコポンの声を遮るように、動揺したハンジが声を上ずらせた。
「増援兵を乗せた機関車の脱線を命じた。離脱している。」
「!!あれは……ナナが……?!待ってよ、じゃあ戻ってくるまで待たないと……!」
「――――待たない。その間に生き残りの奴らがまた追って来る。一刻も早く船を出せ、オニャンコポン。」
「――――了解……!」
オニャンコポンは悔しそうに唇を噛んでから、急ぎ足で操舵室へ戻った。