第230章 狼煙
「はい。もう港は混戦状態です。なんとか守り切って、船で飛行艇を牽引して大陸まで移動しなければ……!もう、パラディ島以外の全人類の虐殺を止める術はなくなります。」
「――――機関車ごと、爆破する。」
「えっ。」
「え、とはなんだ。」
「それはその、確かに増援は止まるのですが……、兵士以外の人も乗車はしていて……、その人達まで、死なせる、可能性があります。」
「――――………。」
「極力死傷者を出さない方法があります。この更に先、山沿いを急カーブで通行するそこの線路に細工をします。そして……線路脇、カーブの内側に少量の爆薬を仕掛けましょう。列車自体を破壊するほどの火薬量でなくていいんです。車輪が上滑りを起こすくらいの爆風と衝撃が生めれば……、列車は横転、脱線しますが……、多くの乗客が、怪我で済むでしょう。」
私の力説に、眉を顰めてキース教官は腕を組んだ。
――――甘いと、言われるのかもしれない。
だけど、帰ってきた言葉は意外だった。
「――――お前は特別な人間じゃないと言ったな。」
「は……?」
「――――特別な人間じゃない者の言い分で、こんな大事なことを譲れんな。お前がそれを言い切る根拠はどこからくる?成功すると言えるのか?責任を負えるのか?」
――――特別な人間じゃない。私は。
間違うし、
失敗するし、
大事な人を救えずに打ちひしがれるし、
弱くて弱くて嫌になる。
――――でも、それが私だから。
そうやって学んできたことは裏切らないってことも、知ってるから。