第230章 狼煙
「あ?」
「あなたの今の仕事は、一刻も早く回復することです。まだこの先……大きな局面が待ってます。こんなこと、なんでもない。ひたすらご自身の体を労わっててください。」
そんな事を言いながらもテキパキと、俺の体の怪我にロープが当たらねぇか、強度も全て細かくチェックしていく。
「生意気な……。」
「ふふ……。」
――――この時わずかにナナの顔色が、良くないように見えた。
光の加減かもしれない。
だが……ロープを巻き付けるということをしただけなのに……、まるで一戦交えたあとかのように、深く早い息を吐いている。
「――――おい、ナナ……、お前――――……。」
俺の暗い言葉にギクリとしたように、俺の方へ顔を向けて……、小さく首を横に振った。
言うなと、言うのか。
お前も覚悟の上でここにいるんだな。
――――王都になどしばらく戻れていない。
ようやく見つけたナナの持病の進行を抑える薬を、補給できているはずがない。
ほんの少しずつ、でも確実にナナの体の中を蝕んでいくそれが――――……
俺はとても、怖い。