第230章 狼煙
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随分と動けるようになった。
まだもちろんふらつくし、まともに歩けるまでではねぇが……自分で起きて飯を食ったり、眠る時間も随分少なくて済むようになってきた。
「リヴァイ兵士長。申し訳ないですが、いくらピークさんが運んでくれるとはいえ……攻撃を避けたりで激しい動きになるかもしれないので、体を固定させてください。」
「ああ……、頼む。」
俺の返事にナナは真剣な顔で頷いて、ロープで車力の体と俺を固定する。指に力が入らねぇ左手で、懸命にロープを引っ張って強く固定を試みる。掌が擦り切れそうに力一杯ロープを引いて、ようやく固定が終わったのだろう、ナナは額の汗を拭った。
「―――悪ぃな……。」
俺のかけた言葉に、ナナは驚いた顔をパッと俺に向けてから、微笑んだ。
「なんで謝るんです?」
「――――看護も世話も、まるっきりやらせちまってる。守るどころか……尻ぬぐいばかりさせてんだろ。」
俺の言葉にまたナナは眉を下げてから、してやったり顔で目を細める。
「『――――戦えねぇことを引け目に思うな。』」
わずかに悪戯な目をして生意気に、俺の頭をぽんぽんと撫でた。