第230章 狼煙
「ナナの言う通りだ。仲間の血を流さない、というのは綺麗ごとだけじゃなく……こっちだって余計な戦闘をしなくて済む。それは大きい。アルミン、詳細をもう少し詰めよう。ミカサは機動力を生かしてアズマビトを最優先で守れ。――――アルミンの作戦が頓挫した場合……局面は一気に殺し合いになる。多方向から攻撃される心配のない地下室へアズマビトを誘導、殲滅するまで立てこもる。そこまでの援護は私とマガト、ジャン、アーチだ。いいね?」
ハンジさんのその言葉に、みんなは覚悟を決めたように深く頷いた。
「ピークは背中にガビとファルコ、オニャンコポン、イェレナとリヴァイ、ナナを乗せて待機。飛行艇の確保が出来次第、乗り込め。」
「――――了解。」
「――――アニとライナーは……。」
ハンジさんが2人に目を向けると、2人共すでに自分の役割を理解している、というように頷いた。
「飛行艇を守る盾になる。なんとしても、守らなければ……世界がここで、終わることになる。」
ライナーは思いつめたように小さく口にした。アニはただそれに同調はせず、一点を見つめていた。
立体機動装置を身に着け、黙々と準備を進めるその後ろ姿に、声をかけずにいられなかった。
「ミカサ。」
ミカサは黙って振り向いた。
「ナナ。」
「一緒に戦えなくて、ごめんね。」
「何を今さら。ナナは最初から戦力じゃない。」
悪気の欠片もないその言葉に目を丸くしてから、ふっと笑ってしまった。
「ふふ、悪気無いのはわかるんだけど、ちょっと傷ついちゃうよ?」
「傷つく?なぜ?」
「いつだって一緒に戦いたいから。」
「――――戦う人間ばかりだったら、すぐに壊滅する。守り、癒す存在がいないといけない。だから恥じる必要はない。私は………例えエレンが傷付いても、治してあげられない。」
ミカサは決して口が上手いほうじゃない。そんな中でも私を気遣ってくれていることが、嬉しかった。