第230章 狼煙
アルミンの作戦はこうだ。
イェーガー派の砦となっていた兵団支部から、車力の巨人の急襲によりジャンとオニャンコポンを“食われた”と見せかけて連れ去ったことを利用する。
「―――僕とコニーが行きます。ジャンとオニャンコポンを殺した車力を追ってここまで来た、と。海を渡って逃げようとしているから、追うために飛行艇とそれを飛ばせる整備士を貸せとフロックにかけ合う。」
「―――信じる?不審な点がありすぎるでしょ。巨人相手にいくら仲間を食われたからといって、頭のいいあなたがコニーとたった2人で……しかも機関車を使わず効率の悪い馬でここまで駆けてくる?」
アルミンの策の穴を、冷静にピークさんが指摘する。それには私もなにも……言い返せなかった。
「でも、それしか……!」
「それしかないわけじゃないでしょ。殲滅するか、どっちかの二択。これは。」
「――――………。」
アルミンは拳を握りしめて俯いたまま、黙ってしまった。甘すぎるって、もしここにあなたがいたらそう言うかもしれない。
エルヴィン。
だけど……仲間をなるべく傷つけないための作戦を考えられるうちは、ちゃんと諦めないでいたい。私もアルミンと、同じ気持ちだ。
「アルミンの策が上手くいかなければ、どの道戦闘になる。そうなれば……元仲間、なんて言っていられずに……結局はどちらかが全滅するまで戦うことに、なる……。」
「……ナナさん……。」
「――――なら、最初から全員を殺す策を打つより、可能性は低くても……!仲間の血を流さずにいられる方法を、試みたい……。」
「――――……低いどころか、限りなく0に近いだろうね……。」
辛辣だが事実だ。
アニは、腕を組んだまま言った。