第229章 結託⑤
「言うまで腕の関節を増やし続ける。」
「マガト!!」
「マ、マガト元帥っ……!やめてください……!!」
ハンジさんの声に感化されて私もようやく体が動く。
マガト元帥の腕を押さえて、イェレナさんから引き離そうと試みるけれど……さすがに一流の軍人相手では、意にも介されない。私に目線を向けることもなくイェレナさんに詰め寄った。
「怖がらなくていい。殺しはしない。」
「それはよかった……。」
いつも飄々と、腹の読めない表情をしているイェレナさんだけど、この時ばかりは――――、恐怖で支配された、怯え切った顔をしていた。
目に涙を溜めて……この人にも、怖いという感情があるのかと……驚きすら、したんだ。イェレナさんは酷く怯えて命乞いに近い形で、エレンの行先を言う気になるかもしれないから、私も飛行艇に乗せて連れて行けと……言った。
私はイェレナさんの腕の処置をしながら……考えていた。
どうすれば……どうすれば、犠牲を少なくしてエレンを止めに行くことができるのか。そんな考え事をしている私の目の端に、104期のみんなに正面から向き合って何かを伝えようとしているマガト元帥の背中が映った。
「コニー、アルミン、ミカサ、ジャン。昨夜の……私の態度を詫びたい。我々は……間違っていた。」
軍人の大きな背中が小さく見えて、その言葉に驚く。
「軽々しくも正義を語ったことをだ……。この期に及んでまだ……自らを正当化しようと醜くも足掻いた。卑劣なマーレそのものである自分自身を直視することを恐れたからだ。――――君たちに責任は無い。同じ民族という理由で過去の罪を着せられることは間違っている。」
昨晩の彼の発言からは想像もできない、言葉だった。
――――いや、もしかしたらずっと……心のどこかで抱いていた違和感だったのかもしれない。