第229章 結託⑤
「ピーク、アニ、ライナー。お前達も世界の憎しみを一身に背負ういわれは無い……。だが……この……血に塗れた愚かな歴史を忘れることなく後世に伝える責任はある。エレン・イェーガーはすべてを消し去るつもりだ……それは許せない。愚かな行いから目を逸らし続ける限り地獄は終わらない。」
マガト元帥のこの懺悔は……小さく抱いていた疑問や違和感を押し込めてここまできた自分自身への、戒めなのか。森の中であの夜、ライナー達を『守るべきものを守ろうとしている、健気な子供達だ』と言った彼の言葉は本心で……自分達こそ正義だとして憎しみを子供たちに植え付けながら憎しみを増幅させた、これまでの日々へに対する……後悔と自戒を述べた。
そして大きく最敬礼の所作で頭を下げた。
「だから頼む……我々の愚かな行いに……今だけ目を瞑ってくれ。」
――――それは、私たちには手を出すな、という事だ。
同じ島で生まれ育ち、中には元仲間も含まれるイェーガー派をマガト元帥とピークさんやライナー、アニで殲滅、する気だ。やらなくていい、ただ邪魔をせずに見ててくれと。
そんな……そんなことは、できない。
私達だって……腹を括らなきゃいけない時なんだって、わかってる。私が口を開こうとした時、きっぱりと強く言い切ったのは、アルミンだ。
「断ります。――――手も汚さず、正しくあろうとするなんて……。」
そこに並ぶ彼らの顔は酷く悲しくて、でも覚悟をした、強い意志を感じる表情だった。
何かを守るために何かを犠牲にする。
――――あぁそうだった。
何もかも綺麗になんて守れない。
何かを成す時……守る時、あなた達もいつも心や体に傷を負ってた。
エルヴィン、リヴァイさん。
だから私も……迷わない。
戯言だけで世界は動いていない。
覚悟も無しに、なにも得られるものなんてない。
戦って血を流して、大切な何かを諦めて、そしてようやく何かを得るんだ。
――――そうやって生きて来た、今までも。
――――そして彼らはイェーガー派の占拠する港からの飛行艇・アズマビトの奪取作戦を決行した。