第229章 結託⑤
「だから必死なんだろうが。悪くないだろ、守りたいものを守ろうとすることは。」
「―――許可しねぇぞ、ナナ。」
「!!リヴァイ、兵士長……!」
看護の甲斐あってか、アッカーマンの力か……1人で起き上がって石の上に腰かけていたリヴァイ兵士長が言った。
「私も許可しないよ。団長補佐は団長の側にいてくれないと。」
「ハンジさん。」
丘の上から降りて来たハンジさんは、絶望的な現実を更に続ける。
「何より……人類にはもう時間が残されていない。」
「――――どういう、こと……ですか……?」
「沖で大量の蒸気を上げながら進む巨人が見えた。その速度から推測するに……既にマーレ大陸には巨人が上陸している。ここから近いマーレ北東の都市は壊滅しているだろう……。」
そのマーレを故郷に持つピークさんやアニ、ライナー……そして他のみんなも、絶望の表情を見せた。
そんな彼らの表情を見て、私もまた……呼吸が遮られて息苦しくなるような感覚を覚えた。
「……こんなに早く海を渡れるとは思わなかった……あれじゃ他の大陸もあっという間だ……すでにどれだけの人々が殺されたことか……。」
ハンジさんに続いて丘の上から降りて来たマガト元帥は、わき目もふらずに我関せず顔のイェレナさんの方へ進むと、悲鳴すら上げられないように口を手で押さえつけ、更に足でイェレナさんの上腕を岩肌に押し付けたまま彼女の手首を掴んで――――……ありえない方向に思い切り曲げた。
「ッ~~~~~~~~!!」
「エレン・イェーガーの行先を言え。」
封じられながらも指の間から漏れ出る苦痛の声とゴキッ、という骨の折れる音に、私の背中はぞわ、と粟立った。