第229章 結託⑤
「――――きっとここだけじゃない、シガンシナ区からの主要なルートの要所にはイェーガー派の見張りがいるはず。もう少しここから北上した海岸沿いに近いところで、私とアルミンがあえて目撃されれば……、あの地鳴らしの巨人たちが海を越えて行くのを目の当たりにした彼らは、超大型巨人のアルミンの力を使って私達が海を渡ろうとすると、考えないかな……?」
「――――……ありえなくはない、けど……食いつくかどうかは半ば賭けだね。」
「……はいピークさん。だけどフロックさんはきっと、動く。私を自由にさせたくないはずだから……少しかもしれないけど、ここから兵を割いて止めに行かせるはず。何より彼自身がきっと私を捕まえに来る。私たちが囮になっている隙にこの港の警備が手薄になって、フロックさんがいないことで指揮系統が乱れればば少しは――――……。」
「行かせるはずないだろ。あんたを囮になんて。」
私の策を一刀両断したのは、アーチさんだった。
「……っそりゃ、私は満足な戦力にはならないですが、囮としてくらいなら――――」
「あんたがいないと兵長の傷を誰が癒せばいい?兵長は必ずジークを討つ。そう約束した。約束したら絶対に果たす人だ。その時まであんたがいる意味は、兵長の回復を少しでも助けることだ。」
きっぱりと言い切るその目は、絶対に譲ってはくれないところなのだと思った。
「――――大層に言ってるけど、ただの私情にしか聞こえない。」
冷たく言い放ったアニを、アーチさんが横目で見ながらふっと鼻で笑った。
「――――今更だろ。今ここに、私情を完全に持ち込んでいない奴なんかいるのかよ?」
その言葉に、アニだけじゃなくそこにいた全員が、ハッとしたような顔をしてから、少し俯いた。
―――そうだみんな、大それた救世主なわけじゃない。
自分の守りたいものを守るため、だからどんな苦境でも乗り越えていける。誰かを、何かを守ることが……自分を強くするんだ。