第229章 結託⑤
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港を遠く見下ろす丘から、マガト元帥が望遠鏡で港の様子を探る。どうやら一部の隙も無く武装したイェーガー派によって完全に港は占拠されているようだ。
飛行艇は貴重な文明の利器。彼らも出来得ることなら地鳴らしが済んだ後の世界に残しておきたいのだろう。でも、私達が地鳴らしを止めるために飛行艇を欲しているとわかれば、それをいつ爆破されてもおかしくない。
更に言うなら、ただ飛行艇だけを守れば良いというものでもない。飛行艇はあのままでは飛べないとオニャンコポンさんは言っていた。折りたたんだ翼を伸ばして整備・点検して……燃料を入れないと、ただの鉄の塊に過ぎない。それを担うアズマビトのキヨミさん達を始めとした技術者を殺されてしまえばおしまいだ。
丘の上で様子を見ているハンジさんとマガト元帥を見上げながら、敵の死角になる窪地で104期の面々とアーチさん、ライナー、アニ達とこれからのことを話す。
でも、ハッキリ言って暗雲が立ち込めていて前が見えない、そんな心地だ。
「―――つまり、飛行艇とアズマビトを守りつつ艇を整備する時間を稼がなくちゃならない。その上……その邪魔をしてくるイェーガー派からは死傷者を出したくない、とでも言うつもり?」
アニの冷静な言葉は、どう考えても不可能な作戦だと突き付けるようだった。アルミンもミカサも……ジャンもコニーも、同じ同期や元調査兵団の仲間がいるイェーガー派と戦うことを躊躇っていたからだ。
その表情を察して、アニは非情な現実を理解させるように言った。