第229章 結託⑤
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朝、起きて驚いた。
昨日の夜はどうなることかと思った険悪さが嘘のように晴れていて……、ジャンがライナーを起こしているところを見かけたりして……私は嬉しかった。
ホッとして皆を見回していると、朝日に遜色ない輝く笑顔を向けるのは、ナナだ。
「ハンジさん!おはようございます!よく眠れましたか?朝食できてます!」
ナナは大鍋の中をかき混ぜる手を止めて、鍋を指さした。その匂いにつられるように鍋の方によると、とても美味しそうなスープがぐつぐつと煮込まれている。
「ナナ、おはよう。えっ、ナナが作ってくれたの?――――にしては上手にできてない?」
「ちょっと失礼じゃないです?その言い方。―――が、お察しの通りで。主にジャンが手伝ってくれました。ミカサもアルミンも、コニーも。あと……アニも。」
ほんの少し柔らかくなった空気で察する。
特にジャンが平静を取り戻しているのは、ナナのおかげか。何か話したのだろう。この子のこういうところには本当に、頭が下がる。
「―――じゃあさっそく皆でいただこう。腹が減っては、だからね。」
「はい!」
昨晩よりも少し味が豊かに感じられる朝食をとって、私たちは荷台を引いて馬で南を目指した。
アズマビトの飛行艇でエレンを追うために。
車力の巨人、ピークは巨人化したまま先行し、港の様子を見に行ってくれている。
――――油断はできない。
なぜなら、地鳴らしを止めたくないイェーガー派はむしろ兵力を増して未だ健在だからだ。
案の定、数時間後に報告に戻って来たピークの口からは、イェーガー派による港の占拠が伝えられた。