第229章 結託⑤
リヴァイ兵士長が目を覚ましてくれて、食事をとってもらっていると、『お前も寝ろ』とリヴァイ兵士長に命令されてしまって、その側でうとうとと微睡んだ。
朝、重なり合う葉の間から漏れる朝日に照らされて目を開けると、川べりの方へと歩いていく背中を見つけた。
――――昨日は触れない方が良いと思って声をかけなかったけど、その心の内はきっと、複雑に荒れているだろうと思って……自然と、足がその背中を追うように動いていた。
かがんで顔を洗うその背中に声をかける。
「おはよう、ジャン。」
「……ナナさん……。」
ジャンは私に叱られるとでも思ったのか、振り向いてはくれたけれど申し訳なさそうな、気まずそうな顔をして目線を下げた。
「――――手、痛くない?」
「手?」
「ジャンも痛いでしょう?手。」
私の言葉が意外だったのか、ジャンは少し驚いた顔をした。
「診ようか?」
「………はい……。」
そう言えば痛い、と感じたのだろう。
ジャンは左手の拳を自らの右手でさすりながら、おずおずと私に差し出した。その手はリヴァイさんやサッシュさんの手と同じで傷だらけで、トリガーを引く指は固く角質化していて……戦う人の手、だった。そしてそれは……ライナーを手当した時にも、思ったんだ。
「――――ふ………。」
「……なにか、おかしいですか……?」
「ううん。戦う人の手だなぁって。」
「そう……っすか……。」
「――――ライナーも、同じような手だった。」
「…………!」
ぽつりと零した言葉に、ジャンは、ライナーと一緒にするなと怒るかと思ったけれど……目から鱗を落としたように、呆然とした表情で、私を見下ろしていた。