第228章 結託④
しばらくの沈黙を経て、冷静で低い声でそれを発したのはアニだった。
「―――それで、あんた達に殺せるの?」
彼女の最も強い印象は――――、女型の巨人の仲間を呼ぶあの咆哮と、グンタやペトラ、エルドさん、オルオを殺した時のあの―――恐ろしいまでに容赦なく私たちの仲間を屠ったその姿だ。今また発せられたその言葉も、命を絶つことに慣れている者の言い方だ。
「エレンを殺せるの?」
その残酷な問を投げかけられたミカサは、しどろもどろに答えた。
「……エレンを止める方法は、殺すだけじゃない……。」
「あんたならそう言うと思ったけど……それじゃ何?説得でもするの?それで考え直すくらいの奴が人類大虐殺なんて実行する?」
アニの言葉は、私やミカサ、アルミンに対して『甘い』と突き付けているようだった。それを分かっていてアルミンはまだ希望を捨てきれない様子だ。
「それはわからないよ。エレンと話してみないと……。」
「じゃあ……対話が可能だとして……それでも虐殺をやめてくれなかった時はどうするの?エレンが敵だとアホになるからわからないの?」
ミカサもアルミンも、答えられない。
それはそうだ。
エレンは彼らにとって大事な存在。家族同然だ。
説得して止められないなら、殺す。
そんな簡単に決断できるものじゃない。
――――そう例え、世界の何万、何千万、何億という人の命がかかっているとしても。特にエレンを守ることを生きる意味のように見出しているミカサにとっては、究極の選択となるだろう。
黙りこくる2人に向かって、アニは淡々と述べる。
「やっぱりね。マーレに故郷を持つ私達がエレンを殺そうとするなら……あんたらはエレンを守るため私達と戦うことになる……きっと。結局はそうでしょ?ミカサ。あんたにとってエレンより大事なものなんてないだろうからね。」