第228章 結託④
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なんなんだよこの女。
やっぱり俺はこの女が気に食わない。
底の読めない、まるでエルヴィン団長と似た怖さがある。
俺を煽ってどうしたいんだ。
うまく駒にして使おうっていうのか?そう、カッとなってナナさんの方に目を向けると、想像していた表情とまるで違う顔を、彼女はしていた。さぞかし生意気で、見下すような目で俺を見ているのかと思った。
だけどその顔は、涙を目に一杯に溜めて今にも泣きそうな顔で、でも僅かに口元は笑ってて。
虚勢の笑みでしかない表情で、なんとか平静を取り繕っていた。
「――――大切な人の死に相対することは……身が張り裂けそうに、辛い……。一緒に、死にたいって……代わって、あげたいって……、私が死ねば良かったって……。何度も何度も何度も、思いました。……ですが……生かされたのは、きっと……彼らの意志で、意味があること、だから……。」
「――――………。」
――――……そうだよな。
この人もまた……、リンファを失って……エルヴィン団長を失って……、医者であるこの人の目の前で、何人仲間が死んでいったのだろう。そして兄ちゃんのことも……兵長がこんなことになっているのも、誰よりも辛いはずだ。
ナナさんは見られたくなかったのか、深く俯いた。
その細い肩は、少し震えて……手に持っていた包帯を、やり場が無い想いを込めるようにぎゅ、と握りしめていた。