第228章 結託④
「――――だから、ここにいてくれるなら……死ぬ、つもりじゃなくて……、生きる、つもりで……いて欲しいです……。」
掠れるような声で呟かれたそれに、体が勝手に反応したみたいに無意識に、俺の手はナナさんの頭をガシガシと撫でていた。
驚いたようにビクッと身体を揺らして顔を上げたナナさんに、俺は何をしたんだと混乱しつつ慌てて手を放した。
「えっ、わり、いや、ごめ、じゃなくて……!あの、深い意味は……っ……!」
大きな目を更にまん丸にしてナナさんは俺を見つめていた。
やめてくれ、違う。
別に好意とかじゃまるでなくて。
むしろ苦手だあんたのことは。
ただただ体がなぜか勝手に……と目を泳がせまくっていると、またもや意味不明なことをこの女は言う。
「もう一回してもらってもいいですか?」
「は?!」
何言ってんだ、この魔性の女が!そういう手で団長や兵長を手玉にとって……と嫌味を言ってやろうかと思った。
けど、まるで少女みたいに、奇跡でも起こったみたいな顔でぽかんとしながら、一筋の涙を流すから……俺は、動けなかった。
「――――サッシュさんと、リンファと、同じ……撫で方を、するから――――………。」
――――あぁなんだ、俺の体を動かしたのは……あんたらの仕業かよ。
でも今度はなぜかそうじゃなく、俺は自分の怪我で痛む腕を動かして、ガシガシとその頭を撫でた。
5つも年上の上官。
さらに兵長の女であるこの人を、だ。
失礼極まりないはずだけど……ナナさんは手の甲で頬を拭って、とてもとても嬉しそうに笑った。