第228章 結託④
「兵長はあんなになっても戦わせるのに?」
「――――………!」
「重傷、どころか瀕死だ。今すぐ入院させておかしくない怪我だ。――――俺が、側にいたら……、俺が、代わりにああなっていたら良かった。」
「そんなこと、言わないでください。リヴァイ兵士長はそんなこと望んでいない。」
「本当はそう思ってるでしょ?愛する人が苦しみながら戦い続ける姿なんて見たくないだろ、誰も。もう守りたかった人も背中を追いたかった人もいない俺が、代わりに――――……」
――――傷付いた心は、アーチさんを不安定にさせていた。
彼の手から、大事なものが次々に零れ落ちて……、まるで役に立たない自分だけが生きている、その居心地の悪さと嫌悪感と罪悪感は……私だって、嫌程感じてきた。
「――――楽になれたかもしれないリヴァイ兵士長を、私はまた地獄に呼び戻しました。」
「………は………?」
私はアーチさんに目も合わせられないまま、その言葉を低く零した。
「エレンを止めて……今度こそ仲間が捧げた心臓の行末を見届けて、もっともっと世界を知るために。――――それこそが、私の生きる意味だからです。リヴァイ兵士長がここにいる意味は……、エルヴィン団長と交わした約束を果たすため。そして、私と共にこの結末を見届けるため。」
「……………。」
「アーチさんは何のために生きますか、これから。」
「なんのために生きる……?」
アーチさんは、目を開いた。
想定外のことを聞かれた、そんな顔をしている。きっとアーチさんが踏み込まれたくないであろうそこに、私は土足で踏み込んで生意気なことを言う。
「――――まさか死に場所を探してここに来たのなら、困ります。王都に帰って療養でもしててください。」
「………は?」
「だってそうでしょ、『俺が代わりに』の続きはなんですか?『死ねば良かった』ですか?甘ったれないでくださいよ。」
「誰が甘ったれ―――――」
怒りに火がついたようにカッとなって声を荒げたアーチさんと目が合った。