第227章 結託③
「もし……本当にエレンを止められたとして……どうするつもりですか?エレンが始祖の力を維持できたとしてもあと4年の命なら……その後この島はどうなりますか?」
2人が眩しいほど強く美しい返答をしたのを横目に、ハンジさんに目も合わせられない俺はそれを問う。
「その後の何十年後の未来もずっと……世界から向けられる憎悪が消えないなら……エレンを止めることはこの島を滅ぼすことになります。」
俺だって自分の身が可愛いだけじゃない。
――――母ちゃんや父ちゃん、家族の命を……また世界が脅かすなら、俺にはエレンを止めない選択肢だってあったんだ。
ハンジさんは出来得る限りの考察を話してくれた。
「……私が思うに、マーレからすれば島に奇襲を仕掛けた途端地鳴らし発動だ。少なくとも……今後しばらくはこの島に手を出せないと思う。」
「『完全に島を滅ぼさないといつ世界が滅ぼされるかわからない』と……ヴィリー・タイバーの演説以上に世界を焚き付けることになりますよ!」
「それはもっともだろうが……いずれにしてもこの想定話には猶予がある。島が滅ぶにしても何年間かは猶予が出来るはずだ。」
「でも!!そうやって可能性を探してるうちに時間が過ぎて何一つ解決できなかった!!だからエレンは世界を消そうと――――――」
「虐殺はダメだ!!!これを肯定する理由があってたまるか!!」
俺の話を遮って、ハンジさんは声を荒げて机をその拳で打った。
――――それはハンジさんの心の叫びだった。
俺は……ハンジさんがこんな様子に陥るところを、初めて見た。
「ごめん……大きな音出しちゃった……。」
ハンジさんの姿を見て、この人がこれまで背負ってきたもの……そして失ってきたもの……それを初めて、想像したんだ。