第19章 不穏
「……!エルヴィン団長…!」
「いったいなぁ、何すんだよエルヴィン!」
「いや、私の優秀な補佐が絡まれていたのでね。」
エルヴィン団長がにっこりと笑う。
「………ねぇ?エルヴィンも思うだろう?最近ナナ、綺麗になったよね?」
私はどきっとして目線を下に落とした。
「………あぁそうだな。これから一般市民の訓練も始まる。兵士以外の出入りも増える………心配で気が気じゃないよ。せいぜい目を光らせておくとしよう。」
エルヴィン団長はふふ、と笑う。
なぜだろう。リヴァイさんと関係を持ってから、エルヴィン団長と目が合わせられない。変に、思われているかもしれない。
彼の瞳はいつも全て見透かしてしまうから、少し、怖い。
「あぁそれとナナ。多忙な中悪いが、一般市民とは別に訓練兵から晴れて調査兵団に入団する新兵の準備の進捗はどうかな?」
「はい、兵服や装備の手配や兵士名簿の作成、私室の振り分けも完了していますし、滞りなく。」
「さすがだね。恩に着るよ。さてハンジは、その膨大な資料を今日中に30ページ以内にまとめるんだ。」
「30……っ?!エルヴィンの鬼!!!」
「エルヴィン団長、30ページは少し少ないのでは……?」
「なに、あれくらい言っておかないと、どうせ倍近くになるのだから。」
うなだれるハンジさんをよそに、エルヴィン団長はスタスタと行ってしまう。後ろ髪を引かれつつ、私はエルヴィン団長についていく。