第227章 結託③
「会いたかったよ。折り入って話がある。ちょうどミカサもあっちに来てくれているから、一緒に話そう。こっちに来れる?あ、アーチは怪我しているならミカサをこっちに呼ぼうか。」
ハンジさんがマントを翻したのを、アーチは制止した。
「いえ、大丈夫です。行きます。」
力の入りにくいのであろう足でアーチさんは何とか立ち上がり、ハンジさんの後について行った。
だが俺はその一歩が踏み出せずにいる。
――――だって、だいたいの話の想像はつく。
ハンジさんが簡単に世界のことを諦めるはずがない。
ミカサを連れてるということは、エレンを止めるつもりだってことだ。――――そして俺はそんなことはきっと、無理なんじゃないかと心のどこかで思ってる。
……だから、エレンの地鳴らしは自然災害のようなもので……俺らは運よく助かったんだと、そう割り切って……フロックの口車に乗って……この先こそは壁内人類を守った英雄として平和に、贅沢に暮らす。
そっちの方が、いいだろ。
俯いて動かない俺を心配したのか、ハンジさんが振り返って声をかけてくれる。
「――――ジャン?どうした?大丈夫??」
「………はい………。」
兵団は解体したも同然で……もはや調査兵団も残るは俺達のみ……、原型を留めていない。だから俺は団長の命令という名目で無理に従う必要もない。
ハンジさんも、最初からそのつもりで俺達の意志を確認しにきたのだろう。
わかっていても、今一つ意志の固まらないままハンジさんの後について行った。
別の建屋に入って、ハンジさんは腰を据えて話そうと、くたびれた椅子をぎぃ、と鳴らして座った。俺達はその話から逃げることもできる。全ては話を聞いてから考えようと思った。