第227章 結託③
「――――イェーガー派が監禁して輪姦……廃人状態、だそうです……。」
「――――………は………?」
俺が零した言葉に、アーチさんは目を大きく開いた。
そりゃそうだろう、信じられないよな、そんな非人道的な話……。あまりに、酷い……。
そう思って目を伏せた俺にアーチさんがかけた言葉は、意外すぎるものだった。
「いや、そんなわけあるか。あの人が……されるがまま黙ってる女じゃないだろ。」
「えっ……?!でも……。」
「――――例え何かされてたとしても、そんなことで折れて終わるか弱い女じゃない。俺は中央憲兵にいた頃に思った。怖い女だって。――――さすがあの切れ者で壁の中の脅威ともいえる……エルヴィン団長の女だって。」
ナナさんが……?いつも朗らかに笑ってて……俺はとても……怖い女なんて感じたことはない。
――――でも、そうだ。
確かにあの人の原動力は、調査兵団で戦うこと、愛する人と共にいることだと――――……言っていた。俺が所属兵団に悩んでいたあの日だ。
それにエルヴィン団長の死ですら泣き喚くこともせずに冷静に死亡を確認して、他の兵士の処置をしていた。
そのナナさんが……自分の目で兵長やハンジさんの死を確認してもいないのに、諦める――――……はずがない。
僅かに、希望が灯る。
「きっと逃げてる。そして逃げてたら……、兵長やハンジさんの元に意地でも駆けつけてるはずだ。……だから、心配、ない……。」
「――――……はい………。」
アーチさんの言葉に僅かに救われる。
……けど……不思議だった。
なぜアーチさんはそこまで、ナナさんのことを信じているのか。
まだところどころ痛むのだろう、時折アーチさんはふーっと息を吐きながら呼吸を整え、側に置いてあった水を口に流し込んだ。