第227章 結託③
唇にも裂傷があるから、あまり傷に唾液がつくと良くない。
食事を口移す時にも触れる部分を最小減にしながら注意を払った。ゆっくり慎重に、なんとか駄々をこねる彼の喉の奥へ、錠剤を流し込もうと試みる。
――――すると、意外にも積極的に彼の舌が私の舌を絡めとり、錠剤を自ら引き取って喉を鳴らした。
飲んでくれた、とホッとして身体を放そうとした瞬間、ぐい、と頭を押さえつけられる。
「?!」
気付けば無事だったほうの左手で後頭部をしっかり押さえつけられて、私を翻弄する。
傷口がある唇に、染みるはずなのに……がぶ、と私の唇を大きく食む。
思わず身体を跳ね除けて後ずさって、思わず声を荒げる。
「――――なにっ……。」
「うるせぇ、ちゃんと飲んだだろ。」
「~~~~………。」
そう勝手な一言だけ残して、リヴァイさんは目を閉じた。
この人のことだ。
マガト元帥の気配が近くにないことは分かっていてやっているのだろうけど、私には心臓に悪い。見られたらどうするのか、という思いと……そしてなにより、リヴァイさんのキスはいつだって私の体温を簡単に上げて、熱に浮かされたようにさせるから。
……ともあれ、いつものリヴァイさんの様子に少し戻ってきているようで、それが嬉しくて、怒るに怒れない。
「……もう……、困った……人………。」
私は恨み言を小さく呟いたけれど心は正直で、ふ、と込み上げる笑みを抑えられずにいた。