第225章 結託
「――――マガト元帥。」
「なんだ。」
「四肢を切断されたことはありますか?」
「は?あるわけないだろう。」
マガト元帥は片眉を上げて馬鹿馬鹿しいという顔をした。
「そうですよね。では、指を切断されたことは?」
「あるわけないだろうが!見たらわかるだろう。」
「――――実際にご自身も腕や指を失って、声を漏らすことがみっともないくらいの痛さに過ぎないと知ってるわけでもないくせに、みっともないと言いましたか?」
「……………。」
マガト元帥と目が合う。
どちらも逸らさない。
逸らしたら負けだ。絶対に反省してもらう。
リヴァイ兵士長を侮辱したことを。
「指は身体の中でも最大レベルに神経が集中している箇所です。幾つもの神経が切断されてむき出しで外気に晒される。――――発狂してもおかしくないくらい、痛いはずです。もし実感を伴うことでしかお分かりにならないのでしたら……私が実感させて差し上げますが。」
―――またしばらくの沈黙が続いて、ついにマガト元帥は目線を斜め下に下ろした。そして若干気まずそうに胸ポケットを探って、何かを私に差し出すように軽く握った拳を突き出した。
「………?」
なんだろうと思いつつ、その付き出された拳の下に手の平を添えてみる。
――――すると、そこに手渡されたのは……
小さな袋に入れられた、一粒の錠剤。
「………これは………?」
「――――マーレで使っている鎮痛剤だ。少しはマシになるかもしれん………。」
「!!」
「………飲ませてやれ。」
マガト元帥は目を合わせないまま言った。