第225章 結託
一通り診終えて、少し膿みかかっているところはあと僅かに残っていた清潔な布に取り換え、血の付いた布を近くの川でよくすすぐ。
拘留地から持って来た大きな鍋を火にかけて湯を沸かし、そこに洗った布を入れてよく煮沸する。
―――別に手伝って欲しいなんて言わないけど……、マガト元帥はずっと、私が動く様子を目の端で見ているはずなのに腕を組んだまま一向に動かない。
まぁ、悪魔だと思っていた存在がいきなりこんな近しい存在になったんだから……そう簡単に気を許せるはずもないか。
ぐつぐつと沸く鍋の中から、木の枝を使って布類を取り出そうとした時、荷台で眠っていたはずのリヴァイ兵士長がうめき声をあげた。
「――――ぅ、あ……っ………く、そ………っ………!」
「!!」
カラン、と木の枝を放り出して、彼の側に行く。
―――――痛いんだ。
……せめて鎮痛剤が、あったら……。
ハンジさん達がミカサ達と一緒に戻って来る時に、鎮痛剤も持って帰ってきてくれるはず……、それまではただ手を握って、額に滲む汗を拭くことしかできない。
一瞬もその表情を見逃さないように側でただ手をそっと握る。
リヴァイ兵士長は痛みのあまりか、左手で私の手首に爪が食い込むほどに握った。この人の握力なら、本当に折れてしまうかもしれないと思うほど強く。それでも少しでも痛みを逃がせるならと掴まれた手首はそのままに、もう片方の手でそっと汗を拭う。
荒い呼吸を繰り返しながら、数分経ったところでようやく落ち着いて来たのか、薄く目を開けて潤んだ瞳が私を見上げた。
掴まれた手首に手形が残っている。
私はシャツの袖を引っ張ってそれを隠した。