第225章 結託
「ありがとう、ナナ。行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
ハンジさんはいつも通りの笑顔で、馬に跨ってシガンシナ区を目指した。
私はいつも見送ってばかりだ。
そして……帰って来なかった人を何人も知っている。ハンジさんの背中になびく自由の翼を見つめながら、まだその死を受け入れられていないあの人の顔が浮かんだ。
「――――サッシュさん………。」
もういないの?この世界には……またふと、私の頭を乱暴にぐしゃぐしゃと撫でる手が伸びてきて、振り向くと悪戯に笑って細められる切れ長の目がそこにあるんじゃないかと、諦められない自分がいる。
拘留班が発つ時、大した会話もしなかった。
――――だって帰ってくるって、また会って笑い合えることを疑ってなかった。リヴァイ兵士長の背中を追ってどんどん強くなって、明るく真っすぐにみんなを率いていく、まぎれもない調査兵団の分隊長として……またみんなを率いて帰って来て、『帰ったぞナナ!』って……笑う顔が見られると思っていた。
――――この戦争の恐ろしさを知っていたはずなのに、私は……。
でも、いくら後悔しても……サッシュさんは戻らない。リヴァイ兵士長が『自死した』と言った。それはいつか再び出会うこともないということだ。
そして……リヴァイ兵士長はまた目の前で、片腕のような存在を失った。
ハンジさんの背中が見えなくなってからリヴァイ兵士長の方を振り返ると、同じようにハンジさんの背中を見つめていた。
身体だけじゃない傷を負ってる。
たくさん、たくさん。
少しでも側で、それが癒えるように……私が今できることは、それが全てだ。
「リヴァイ兵士長。このあと傷口を一度診ますね。その後は、眠れるなら眠った方が良いです。」
「……ああ。」
私がリヴァイ兵士長の包帯を解いて傷口が化膿していないかを見たり、傷口からの最近感染で熱などが出ていないか、くまなく診ていく。
マガト元帥はその様子を腕を組んで少し遠目から見ていた。