第225章 結託
「………エレンがこんな虐殺を実行したのは、私達……仲間や、家族を守るためなんです。そんな事をしなくていいんだと、私たちは彼を止めたい……。世界中の人類を死なせない、それももちろん望みます。――――でも、私は正直なところ……大事な人を、守りたい想いの方が強い。だから、敵であったって……なんの力を使っても、誰と組んででも、彼を止められる可能性のあることは全て、やりたいんです。」
「―――――………。」
ピークさんの視線は少し伏せられて、何かを思考するように静かに、小さく揺れていた。彼女の様子を見て、マガトさんが私を睨んで口を開いた。
「マーレではエルディア人はまともな扱いを受けられない。だから皆戦士を目指す。それだけのことだ。歴史が違えば文化は異なる。」
私はその言葉が嫌だった。
当たり前だと言うのか?
迫害を受けることもまた運命で、仕方のないことだと。
私はマガトさんに威嚇の視線を向けてからピークさんに尋ねる。
「――――まともな扱いを受けさせたいのは、誰ですかピークさん。その誰かを、このままでは地鳴らしが………踏みつぶしてしまう。その前に止めましょう。」
更に思考するように目を伏せたピークさんを、マガトさんは微妙な表情で見つめていた。
その表情は私たちに向ける顔とはやはり違っていて、彼と戦士たちは人種も違い、マーレの中では支配する・される立場でありながらも……共に戦う仲間だという意識、絆は確かに存在するのだろうと感じる。
やがてピークさんが口を開いた。
「―――………気持ちが分かる、とでも言いたいの?」
「いえ。私達とあなた達では育った環境も信念も違う。その気持ちは想像してみても、わかるだなんて簡単には言えません。だってきっと、違うから。だけど、リヴァイ兵士長が言ったように利害が一致するなら……、お互いの守りたいものを守るために、力を合わせて損はないでしょう。」
「……………。」
「……………。」