第225章 結託
「――――ハン、ジ……さん………。あれ………なんですか………?」
「……なんっだ……よ、あれ………まさか…………。」
「……なんだよ、ありゃあ……。」
「―――――エレン………?」
数百体の巨人の後ろに、まるで彼らを操っている張本人のような風体で……憎悪を形にしたような形相の、異形の巨人……いや、巨人と呼ぶのすらも怪しい。
だって………それは巨人と呼ばれて想像する大きさなどではなかった。
長い長い黒髪を揺らしながら、エレンの面影など微塵も見つけられない恐ろしい顔が、まるで背骨と脊椎からぶら下がっているようにゆらゆらと揺れている。
四つん這いになっているような恰好で……背骨のようなものからは鋭い棘が生えていて、あばら骨と思われるそれは、小さな村くらいなら覆い尽くしてしまいそうなほどの大きさだ。この世を恐怖で支配するような ”それ” が私たちの側をゆっくりと通り過ぎるのを、ただ茫然と見ていた。
「―――……っあの巨人、きっと……エレン、ですよね……?」
「………考えたくないけど、そうだろうね……。」
「あれが、始祖の……巨人………。」
なんて禍々しい。
気付けば、涙が一筋頬を濡らしていた。
――――あんな姿になって、残酷な決断をさせてしまうほど、追い込んだ。
力に、なれなかったんだ。
……エレンのその……世界中が私たち島の悪魔に向けた憎悪をまるで一人で抱えているような、憎しみと復讐の象徴のような姿は、私の心を抉った。