第224章 地鳴
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――――悪夢とは、地獄とは……こういう風景だったのかもしれない。
私たちが戦っていたシガンシナ区を囲んでいた壁が一気に砕けて崩れ落ちた。そして露わになった無数の巨人たちが……歩み始めた。
とてつもない地響きは、まるで大地が割れて裂けてしまうんじゃないかと……思うほどだ。
シガンシナ区からウォール・マリアへと抜ける門のところに、超大型巨人ですら匹敵しないほどの大きさの骨の怪物のような気味の悪い存在が、ゆらりと揺れながら佇んでいる。
あれは何……?
大き……すぎる。
エレンがいた場所から出現したように見えた。
呆然としながら巨人の地鳴らしを見つめていると、隣にいたアルミンが必死の形相で何かを訴えかけている。でも、あらゆる破壊の限りを尽くしながら重なるその足音で、何も聞こえない。
「―――ッ、エレ――――!!」
「なに?!聞こえない!!」
「僕た―――――勝――――」
アルミンに近付いて、耳を傾けてその声に集中すると辛うじて聞き取ることが出来た。
「エレンが始祖を掌握した!」
――――エレンが、やった。王家の血筋ジークとの接触を果たして、アルミンの読み通り……力の発動はエレンの意志だということが、真っ先に地鳴らしを発動して連合軍を撃退しようとする行動からも読み取れる。
「エレンは味方だ!そうに決まってる!!」
アルミンの叫びはまるで、そう信じたかったのだろうと思わせるものだった。
――――でも、その望みは打ち砕かれる。
足音が一向に止まない。それどころか、増えていっている……。周りを見回したアルミンが、青い顔をして遠くを指さした。
「ミカサ!ウォール・マリアの壁まで崩壊してる!!マーレの連合軍を潰すだけならこんなに必要無いよ!!シガンシナ区外壁だけで……数百体の巨人だけで十分だ!!壁を失ってまで攻撃するなんて!!」
それはそうだ。
地鳴らしの威力を見せつけて、抑止力にしたいのなら……マーレの連合軍を数百体の巨人で向かい撃てば世界にその威力を見せ締められる。そういう作戦だったはず……なのに……。
エレンが選んだのは、まさか―――――。
そう、嫌な予感を感じた瞬間、私たちは異次元の空間に引きずり込まれた。