第223章 闘志
始まったのか、ついに………また。食い破られた天井から降り注ぐ岩板の隙間から、エレンが顎の巨人に足を食われた姿が目に入った。――――巨人化、する……!
「――――ここから退避しろ!!戦え!!お前ら!!!」
それは心からの叫びだ。気付けば、声に出ていた。
マーレの巨人が2体、俺達の懐に入り込んでいた。だとしたら来るに決まってるはずだ。本隊が。慌てて外に飛び出して見た光景は、エレンが巨人化する爆風と蒸気と、その蒸気の向こうに――――迫り来る、青い空を背景にその巨体を魔法のように浮かべている飛行船。
そして次々に空から降って来る銃器や、兵士達。
「―――怖ぇよ……兄ちゃん。」
心の声が、ぼそりと漏れていた。
こういう時、真っ先に飛び出していく、俺が追う指標にできるその背中はもうここにはいない。だから俺が自分で切り拓くしかないんだ。
「―――見てろよ、兄ちゃん、リンファ……!」
考えろ、考えて最善を尽くせ。
俺は兵団支部の建物を出て立体機動で辺りを見回せる高い位置についた。見下ろした街には、進撃の巨人と化したエレンと顎の巨人。更に発光したのは――――車力か。エレンは飛行船の方を見上げると、吸い寄せられるように歩き出した。
まるで因縁の相手を迎え撃つかのように。
そして飛行船から降りて来た一人の兵士が空中で発光したかと思うと……ズシン、と地響きを鳴らして―――――鎧の巨人が降り立った。すぐさま鎧とエレンの一騎打ちが始まる。
その隙に顎の巨人は姿をくらまそうと、街へと消えた。
――――エレンを奇襲、する気だろう。