第223章 闘志
「なぁおいアンタ。」
「――――あ?」
その男は片眉を上げて、うざそうに、怪訝そうに俺を見た。
「イェレナさんに伝言したいんだが、どこにいるか知ってるか?」
「………さぁな。」
男は一瞬制止してから、目線を外した。
「………お前駐屯兵団だろ?どこの区にいた?」
――――マーレ兵のお前が、この壁の中の区域を答えられるはずがないよな?そう、追及するようにじろりと睨むと、男は目線を逃がしていた目を見開いた。
『ヤバイ』そう思った時に、その顔をすんだよ。
何度も見て来た。
尋問の中でこの顔をした奴は、拷問部屋に送って吐かせてきた。
数秒の沈黙を待って、俺に目線を戻して、男は口を開いた。
その顔は……薄く笑いを浮かべていた。
「俺はポルコ・ガリアード。」
「………名前は聞いちゃいない。」
「―――――レベリオ区に、いた。」
男は不敵に笑った。
「!!おい全員ここから逃げ――――……」
ゾク、と嫌な予感がして、周りの奴らを退避させようと声を発した。が、遅かった。
俺が一瞬後ろに飛びのいたその瞬間、目の前のその男は眩いばかりの光を発して――――……その光の中から現れたのは―――――――
顎の巨人。
レベリオ区で見た、そして今同じく目の前に存在するそいつは、顎と爪を強化し俊敏な動きで俺達の仲間を多く葬った野郎だ。
そして顎の巨人は俺には目もくれず、天井をギロリと睨むと、石造りの天井を―――――
その強靭な顎で、食い破った。