第223章 闘志
「――――クソ、こんないつこいつらが巨人化させられるか分かんねぇところにいたくねぇよ。」
「まぁそうだな、俺達も……白を巻いちゃいるが……これだけの人数が巨人になっちまったら、俺達は……どのみち、食われる……。」
あぁそうだよ。
地獄絵図だった。
仲間が一瞬で知能のない巨人になって自分を食おうと襲って来る光景はな。
ぎり、と握る拳に力が入る。
「ったく不公平だろ……!俺もあっちに行きたかったぜ。」
「あっち?」
「―――ほら、調査兵団の団長補佐の女囲う役。」
「あぁ。」
「俺聞いたんだよなぁ。『幽閉さえしてれば、殺さなければ、ナニしてもいい』って。」
ひひ、と下衆な笑いを漏らすその男の言葉に、凍り付いた。
――――ナナさんのことか?
「それにしてもフロックさんも鬼だよなぁ。いっそ殺された方がマシだと思うような扱いされてんじゃねぇの。――――ああ――――俺も混ざりてぇ。」
「確かにな、めちゃくちゃいい女なんだろ?元団長が入れ込んでた女だって聞いたぜ。」
「ちょっと抜け出して味見しに行くぐらい、赦されねぇかなぁ。」
なんだよ、それ……フロック、あいつ……ナナさんは……ずっと一緒に戦ってきた、仲間だろ……?
俺達が調査兵団に編入してすぐ……ナナが俺の怪我を診に来てくれたあの時、フロックの声は上ずっていて……明らかにナナさんに好意を向けていた。それが……段々とフロックのナナさんを見る目が、変わって来ていたことには、気付いてた。
――――だけど……なんで、何があって……そんな酷いこと………。
『酷いこと』そう思った自分にハッとする。
――――俺はもっと酷いことを、やってきたじゃないか。
―――今更俺が何を言える?
そう思ってるはずなのに……今すぐナナさんを助けなきゃ、無事でいろよと気持ちが急く俺はきっと……随分と兄ちゃんとリンファの影響を受けてるんだろう。