第223章 闘志
俺はマントを脱ぎ捨て、奴らと同じように左腕にシャツの背中部分を割いた布を巻き付けた。仲間の目印ってのは便利だが……それを纏われたら、侵入者に気付きにくくなる。
それにこいつらの中で何人が把握してるだろうな?
1ヶ月以上も前に拘留班としてここから発った兵士の顔なんて。
きっと誰も俺が何者かを認識できない。
幸い俺が背負ってるのは調査兵団の自由の翼。
それにこの白い腕章で、きっと俺をイェーガー派だとすぐに解釈するはずだ。
俺は兵団支部に向かった。
あえて息を荒げて、門の守備を守る白い腕章の奴らに『イェレナさんにジークさんから伝言を言付かった』と言うと、あっさりと兵団支部内に通された。
――――短い期間で結束した組織は、穴だらけなんだよ、大抵な。
中央憲兵で見てきた。
オママゴトみたいな稚拙な反逆を企む組織が、いとも簡単に瓦解していくところを。
兵団支部の中に通されたその広間は、その時はまだ落ち着いていて……そこらで数人のイェーガー派の兵達が話をしている。そこは情報を収集するにはうってつけだった。
壁にもたれかかって、何事もなく指示を待っているようにして……耳を傾ける。
そこで得られたのは、ジークの脊髄液の入ったワインを兵団内で流通させたことで、もうあとはジークの叫びだけでいつでも巨人化させられる段階まで来ているということ。
赤と黒の腕章は……巨人化してしまう奴らの目印。
服従の姿勢を見せれば赤、見せなければ黒……というわけか。
そして、本当はそこまでで良かったのに、必要な情報以外にも余計なことまで俺の耳に入ってきた。