第223章 闘志
可能性としては、兵団が更にイェーガー派に占拠、もしくは完全に陥落した可能性の方が高いだろう。
エルヴィン団長のいない、かつ各兵団の団結力もまばらで疑心暗鬼の兵団側。
ジークとイェレナに……進撃と始祖と戦鎚の力を合わせ持つエレンが組んだイェーガー派。
……どちらが狡猾に上手く事を運びそうに見えるかと問われると、それは後者に違いないと、状況をちゃんとわかっていない俺でさえ思うからだ。
――――だとしたらこのまま兵団支部に突っ込むのは危ない。まずは状況を正しく把握してから……事を運べと言ってた。
なぁ?ケニー隊長。
あんたは最後は結局いつも力でものを言わせてたけど、そこに至るまでの緻密な計画と下調べに隙がないほどだった。
あんたの教えが今……ちょっと役立ちそうだよ。
皮肉だけどな。
「………クソッ……、痛いな……っ……。」
ズキズキと痛むあばらは、わずかに集中力を削いでいく。
だが、やるんだ。
俺は生かされた。
――――兄ちゃんに、兵長に……仲間に。
報いるために、何ができる?
考えろ。
考えて、動け。
兵団支部の付近に向かう馬上であちこちを見回しても、兵士の姿がない。
やっぱりおかしい。
馬を降りて、兵団支部の近くの高い建物の中を駆けあがる。
兵団支部の中の様子を知らなきゃ、動けない。最上階の窓から屋根に出て、遠目に兵団支部の方を観察すると……やっぱりだ。壁に手をつかされ、銃で脅されている兵は多くが憲兵団や駐屯兵団……、何かを記録しながらそいつらの腕に色の異なる布を巻きつけているのは……多くが調査兵団の翼を背負ってる。
「――――イェーガー派が占拠したか。あの腕の布は……目印?」
赤と黒の違いが何を指しているのかはわからないが、イェーガー派はみんな白い布を巻いてる。