第222章 愛憐②
私は小柄な彼女の体を少し抱き起す。
何を掴みたかったのか、伸ばされた片腕と指は死後硬直で不自然に固まっている。その身体を思い切り、強く抱きしめた。連れて帰ってあげることも、その目を閉じてあげることすらできない。
まるで空に自由を乞うかのように手を伸ばす彼女を抱き締めながら、抑えられない慟哭を上げた。
「――――ぁああぁぁぁあ……っ……!」
私があの幽閉先から逃れるために協力を仰いで……そしてここに連れて来なければ……アイビーは死なずに済んだ?かもしれない。
――――でも、かもしれないを悔やんだところでどうにもならない。
ねえアイビー、その閉じない瞳は……その先に何を見てる?伸ばした手は、何を求めてる?
――――あの日クロルバ区で見たと言ってくれた、リヴァイ兵士長と私の背中を、追ってくれているの?
憧れ続けたリヴァイ兵士長に手を、伸ばしているの?
「――――リヴァイ兵士長とハンジさんを……私の大切な人を守ってくれて――――……ありがとう……っ………、アイビー…………。」
アイビーのその姿は……幼かったあの希望に溢れていた彼女を知っているからか、その死に顔との落差があまりに残酷で……血が凍りつきそうだ。
その死に意味がなかったなんてことに、絶対にさせない。
アイビーが守ってくれたもので、世界は少し良い方向に動いたんだと、そう思えるように……私たちも心臓を捧げる。
人類のために。
――――ねぇエルヴィン。
私も、沢山の大事な仲間を失ってきて……今ならあなたが歩み続けた道の過酷さをより鮮明に想像できる。
みんなが見てる。
私たちの選ぶ未来を。
――――それはとても心強くて……同時に、
息が出来なくなるほど
苦しい。