第222章 愛憐②
「痛い、の……?」
見ていられない。
顔を背けたい。
辛くて。
だって私はなにもしてあげられない。
痛みを引き受けることも、和らげることも。
役立たずの自分を疎ましく思いながら、リヴァイさんの顔を覗き込んでそれを促す。
「痛いって、言っていいんですよ。我慢しなくていい……。」
「ッ………ぅ、あ……っ……!」
「――――痛いね、痛い……。分けて……私に……。苦しみも、痛みも、一緒に感じたい。」
そう震えるような声で呟いて彼の首筋に顔を埋める。
身体に障らないようにそっと体を寄せて頭を撫でると、リヴァイさんは掠れるような声で言った。彼のこの言葉を聞くのは、これで3度目だった。
「――――ナナ……ッ………。」
「はい、リヴァイさん。」
「……っ……クソ……痛ぇ……っ……。」
はぁはぁと息を吐く様子を見て理解する。
アッカーマンだから痛くないわけでも、辛くないわけでも、強いわけでもない。
この人はずっと一人で、当たり前のように痛みも苦しみも辛さも押し込めて背負い続けて来ているだけなんだ。
――――それを、一言でも、分けてくれた。
私はリヴァイさんの手をそっと両手で包んで、魔法をかける。あなたは私の恐怖をはらう魔法をかけてくれたから。
今度は、私が。
「痛いの痛いの、飛んでけ。」
「………っ………。」
「痛いの痛いの、飛んでけ。」
「………なんだ……、そりゃ……。」
リヴァイさんは少し呆れたような目を私に向けた。
「魔法です。」
泣きそうな顔なんて向けない。
大丈夫だと、笑っていないと。
私が柔らかく微笑むと、リヴァイさんはゆっくりとまた、目を閉じた。
「………ガキじゃねぇ…………が………。」
「―――――悪くない、でしょう?」
「―――――ああ。」