第222章 愛憐②
「……あの、嫌かも、しれないですし後でお叱りも受けるので、今だけは……許してくださいね……!」
そう言って兵糧を少し齧って、ゆっくりと口内で繊維まで潰すようにしっかりと噛む。
唾液と混ざって、やがて水分が殆どなかったカチカチの兵糧も、どろりとした流動食状になった。
――――水よりも、噛むという動作が加わることで唾液も混ざっちゃうし……潔癖に近いリヴァイさんが、嫌がるかもしれないと想像はできるんだけれど……そうでもしないと、とても食べられそうにないから。
少し気まずい顔をしながら顔を近づけると、リヴァイさんは歓迎するように自ら唇を開いて小さく舌を差し出した。
「………!」
再び唇を合わせて、少しずつ、咀嚼した兵糧を口移していく。それを何度か繰り返して……私は、重症を負ったときにエルヴィンがこうして私に食事を与えてくれていたあの日々を思い出した。
――――こんな気分だったのかな。
親鳥にでもなった気分だ。
唇を放すと、リヴァイさんが小さく声を発した。
「――――くれ。もっと。」
「えっ……、はい……!」
食べられるのは良いことだ。
そして不謹慎にも、口移しを嫌がらないでいてくれたことが少し、嬉しい。間に水を飲ませて、また兵糧を食べさせていく。良かった……万全の状態はほど遠くても、この回復力なら近いうちに起き上がれるくらいはできるかもしれない。
「――――ッ……!」
ほっと息を吐いたあと、不意にリヴァイさんが顔をしかめて小さくうめき声のような声を上げた。
息が荒く、とても……辛そうだ。
エルヴィンの時と同じ――――……幻肢痛だろうか。