第222章 愛憐②
「お前には……酷な、こと……だが……。」
「――――はい。」
「………拘留班はアーチを除く全員が……死んだ。」
「――――………。」
想像通り、想像もしたくないような話だ。
無事だったのは……リヴァイ兵士長と、アーチさん、だけ……なんて。
だけど……一番辛いのは………
「おそらくワインに……獣の脊髄液が入ってた。巨人化した奴らは……俺が――――……殺した。」
「――――サッシュ、さんも……ですか……?」
「あいつは……自死した。」
「……自死……?」
どういうこと……?巨人になったら……自分の意志など持てないはずで……でも、巨人になる前にサッシュさんが自死する状況なんて……。頭の中で考えてみても見当もつかない。
でも……今はもう、いい。
私はまた水の入った瓶に口をつけて、リヴァイさんの言葉を遮るように口付ける。
水滴がリヴァイさんの唇の端から一筋首筋の方へ流れて、それを拭いながら彼を見つめる。
「――――アーチは、伝達に行かせた。何もなければ……シガンシナ区に、着いてる……だろう。」
「はい……。」
「サッシュ、は………。」
リヴァイさんの睫毛が僅かに伏せられた。何も思わないはずがない。
それをまた言葉に出す度にあなたは守れなかったと、自分を責めるでしょう?きっと。
それにサッシュさんが自死したならそれは……リヴァイ兵士長を、仲間を守るためだったんだとわかるから。
もう、いい。
「――――リヴァイさん………。あまり話すと、体に障ります。」
「………すまない……ナナ……。サッシュを、守ってやれ――――。」
その言葉を遮るように、キスをする。
水を飲ませるためじゃない。
あなたを抉る言葉を封じたかった。
唇を放して目を開けると、目の前のリヴァイさんは左目を大きく開いて驚いた顔をしている。
頬をそっと手をやって、ゆっくりと、首を横に振った。