第222章 愛憐②
「もう随分シガンシナ区に近いはずだ。私これ食べたらさ、もう少し先まで偵察に行く。すぐ戻るけどね。ナナはリヴァイの容体を診ててやって。」
「はい……、そうですね。マーレからの飛行船も随分来ていましたし……マーレ兵がこちら側にも出て来ていたとしても、おかしくない……。まだイェーガー派の残党がいる可能性も……。」
「うん。今こんな状態のリヴァイを敵前に晒すわけにはいかない。人類の中で最も生きていてほしくない存在だろうし。」
「はい。わかりました。どのくらいで戻られますか?」
「20分くらいかな。」
「……お気をつけて。」
「ああ。ナナもね。――――何かあったら、守ってやって。あなたが、リヴァイを。」
ハンジさんはぽん、と私の頭に手を置いた。ハンジさんはリヴァイさんのことを愛してやまないと言っていた。それを、私に預けてくれる。
それが嬉しかった。
「はい!」
ハンジさんはマントを翻して、馬を駆った。
その背中を見送った後、荷台で目を閉じたままのリヴァイさんの様子を見つめる。唇が渇いてる。
「……リヴァイさん……、聞こえていますか?お水、飲みますか……?」
私が声をかけると、ゆっくりとその目が開いた。
「……ああ………。」
「移動の振動で辛いかと心配していましたが、よくお休みになっていたので安心しました。」
リヴァイさんは薄く開いた目で、私を見上げている。
「――――失礼します。お水、飲ませますね。」
軽々と抱き起して飲ませてあげることができなくて、申し訳ない。断ってから水の入った瓶を口につけてそれを傾けて、私が水を口に含んだことで察してくれた。
顔を近づけると、小さく唇を開いて受け入れてくれる。
びっくりさせないように、少しずつ少しずつ……唇を割って水を流し込む。リヴァイさんは上手にそれを受け取ってくれて……こくん、と何度か喉を鳴らした。
こんなにもこの人が傷を負う状況……それは、きっと……拘留班のほとんどの仲間が、もう……。
あまりに恐ろしい想像をしてしまう。
察したのだろう、リヴァイさんの濡れた唇が動いた。