第222章 愛憐②
夜明け前。
まだ薄暗いその時間に、ハンジさんが完成した荷台を馬に繋いだ。そして今度は私が見張りをして、完全に日が昇るまでハンジさんに休息をとってもらった。日が昇った空が徐々に明るくなって、世界が色を取り戻していく頃、ハンジさんと協力してリヴァイさんを荷台に乗せ、私たちは巨大樹の森を出た。
エレンが始祖の力を使って何かをしようとしている。
話さなくてはいけない。
私たちは何度でも向き合って、エレンが地鳴らしを……始祖の力をどう使うつもりなのか、知らなくてはいけない。
それでなくても舗装された道ではなく、しかも雨上がりでぬかるんでいるところも多くて、思うような速度で移動は出来ない。いくら荷台で運んでいるとは言え、相当な振動はリヴァイさんに負荷をかけてしまう。
ゆっくりと道を選びながら、ハンジさんが馬で数十m先を行ってくれて、私はリヴァイさんを乗せた荷台を引く馬の手綱を取る。ゆっくり、でも着実にシガンシナ区の方へと歩を進めながら数時間経っていて、太陽がもう随分頭上に昇っている。
「休憩にしようか。」
「はい。」
ハンジさんが戻って来てくれて、川べりで少しの休息をとる。拘留地から見つけた僅かな食料の残りの兵糧をハンジさんに手渡す。雨水を採取して沸かして、念入りに洗ったうえで大鍋で煮沸消毒したワインの空き瓶に入れて持ち運んでいる。
――――このワインを飲んだみんなは……どうしたのか……。
ぞわ、と総毛立つような嫌な想像を、してしまう。
ふるふると頭を横に振っていると、ハンジさんが兵糧をバリバリと齧りながら、口元についた食べくずを指で拭いながら言った。