第221章 愛憐
「どうせナナのことだ。監禁場所からずっと馬を駆ってここまで休まずに来たんだろう?」
「………は、い……、あ、でも平気で……!」
「薬は?持って来てる?」
「………いえ………。」
ハンジさんはこういう時は厳しいんだ。
病のと上手く付き合うために飲み続けている薬も、もちろんあの状況で持ち出せるわけがなく……今は服用ができていなくて、ほんの少し疲れやすい……また貧血のような症状が、ないわけではない。
目を合わせられなくて泳がせていると、ハンジさんはむにっと私の両頬をつまんだ。
「ほら!ナナの悪いクセだ。そうやってすぐ無理する。私の方が今元気だ。少なくともその死に損ないと、無茶ばっかりする補佐官殿よりはね。」
「………ハンジさんだって、無理、するじゃないですか……。」
「うん?」
「……お互い様ですよ。」
言われっぱなしで少し肩身が狭くなってしまった私は恨めしそうにハンジさんを上目で見上げると、こんな他愛もないやりとりが嬉しいんだという顔で、ハンジさんは笑った。
「――――なんてのは建前で、本当はさ。早くリヴァイに少しでも良くなって欲しいから。」
「………?」
「一番の薬はナナ、あなたが側にいることだ。わかってるだろ?」
「………そんな……ことは……。」
「ないかい?本当に。」
その問い方はエルヴィンの口調にそっくりで……、また少し、心がきゅっとなって、素直に答えた。
「………あるかもしれません。……いえ……そうで、ありたいです。」
「だろ?だから側にいてやって。」
「――――はい!」
ハンジさんはふっと笑って、その場を後にした。