第221章 愛憐
「――――ゆっくり、横になってください。軽々と横たわらせてあげられなくて、すみません。」
リヴァイさんの身体を支えながら、ゆっくりと背をマットに沈めると、大人しく横になってくれた。
ハンジさんがリヴァイさんの近くに歩み寄り、その顔を覗き込むようにして話す。
「ジークはイェーガー派とシガンシナ区に向かった。それから半日ほど経ってる。一体……何があったの?」
「――――ヘマをした。」
小さくリヴァイさんの口から出た言葉はとても小さく、でも悔しそうで……、どこか遠くに向かって話しているように聞こえた。空の向こうの……あなたの唯一無二の戦友に、言っているのか。
「奴に……死を選ぶ覚悟があることを……見抜けずに……また……逃がした……。」
リヴァイさんはゆっくりと自分の右手を持ち上げて視野に入れた。その指を見ると……やっぱり私は、苦しい。
息が……できなくなりそうだ。
どれほど無念で、どれほど悔しくて……どれほど……。
後悔を嫌うあなたが、その時の自分の判断を責めるとしたら、それが悲しくて……、『生きてくれている、それだけでいい』そう言って抱きしめたい。
いいの、本当は……ジークさんのことも、もう……いい。
これ以上あなたが傷付き失うなら、もういい。
エルヴィンの、仲間の仇なんて討たなくていい。
――――そう、言いたいのに。
言っちゃいけない。
だってその為に、リヴァイさんをまたこの残酷な現実に呼び戻した。
――――私はただ両手の拳を膝の上で固く握りしめて、俯いていた。微かな震えを、2人に悟られないように。
「無念で堪らないだろう……、でも今は……。」
回復を優先するようにハンジさんが促そうとして言った言葉に返した彼の言葉は、やっぱり……彼らしいものだった。